信天翁/帆場蔵人
あほうどりはどこかに消えた
たくさんの人間の手が羽をむしり
あほうどりを引き摺り落とした
あほうどりは何処かと思えば
しろい鳥の群れ、冠島のあたりを
ウミネコが、オオミズナギドリが
波濤に狂おしく立ち向かっている
あほうどりの兄弟たちよ
いつかは落ちるのだろう
しかし、あほうどりは飛んでいた
誰のためでもなく、そうであるから飛び
天を信じてその運動に身を任せたとき
信天翁とよばれた
あほうどりを思えばわたしは
あの白い鳥の群れのなか
信天翁という一点へ
飛翔をし続ける
いつかは落ちるのだろう
しかし、わたしはここにあるのだ
誰のためでもなく、そうであるから
その運動に身を任せているのだ
わたしはいま一羽のあほうどりだ
信天翁はすべての鳥への願いなのだ
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