蜘蛛の恩返し/ああああ
 
 彼女はとても優しい子だった。掃除の時間にゴミ箱の裏から大きい蜘蛛が出てきたとき、彼女は「蜘蛛を殺さないで」と叫んだ。彼女は蜘蛛を捕まえると、そっと窓から逃してやっていた。

 ある時期から彼女は毎日のように遅刻してくるようになった。学校に来ても青白い顔で眠り続けている。給食にもほとんど手を付けず、日に日に痩せていくように見えた。最初はきつく叱ってみたが、どうも心配になったので保健室に呼んで何か悩みでもあるのかと尋ねた。彼女はなにもないです、王子様みたいな美少年に優しい目で見つめられる幸せな夢を見ていますと話した。それを聞いた私は彼女の両親に電話して、彼女が寝ている間、こっそり様子を見てくれる
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