殿様/ああああ
出し、死刑まで廃止したときには家臣も随分反対したが、うるさいやつはぶん殴って黙らせた。
殿様が眠りについて一年がたった。しかし殿様はまだ目覚めない。「今日は殿様が目覚める日ではなかったよ。うっかりしていた。うるう月を計算に入れてなかったからね」と家老が言った。
殿様が眠りについて二年がたった。殿様はもう目覚めないかもしれないと、多くの人が薄々感じ始めたのはこの時期だった。殿様のお姿を一度も拝んだことのない君たち、君たちは不幸だ。
殿様が眠りについて三年がたった。身の丈が鯨ほどもある殿様を保管しておく費用は誰が出すのかという議論が持ち上がる。「今頃起きてこられても厄介だよ。なにせ赤ん坊殺しのくせに死刑囚は救おうって御人だからな」と言って笑うものもいた。
そしてあるとき朝が来た。
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