殿様/ああああ
殿様は年に一度だけ目覚め、非常に腹を空かしている。八十八人の毒見役を経由して運ばれてくる料理は、初期状態掛ける一引く毒見役の食べる一口分の八十八乗にまで減衰する。おかわりはない。
寝起きの殿様は時間が一方通行であることを思い出せずに、工事中の廊下を通ろうとするが、小姓もそれを止めない。殿様は強運だから、地雷原を歩いたってへっちゃらだとみんな知っている。なにせ犬の糞を踏んだことだって一度もないのだから。
一年分の菌が繁殖した殿様の体は、あちこちにきのこが生えている。薬師は突き進む殿様からきのこをむしり取る。ペニシリンが発見される百年以上前のことだ。
眠くてもお腹が減っていて
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