ドレリア/la_feminite_nue(死に巫女)
 
のように、双つの腕は振られていた。朧な霊(たましい)は空へと昇(あが)った。海浜を移ろいながら、求めつつ過ぎゆく永劫留まり処のない魂は、漂泊の湖上をさまよっていた。眸(め)には黝(くろ)く厳めしい巌の映り。月は未だ照っている。……この夜を賭け。風車(かざぐるま)は巡る。空の空(あお)を移して青い、全き青に咲き乱れる、この花々の丘の頂きに据えられて。衣を剥ぐ、この夜の罪を、一心に葬っている。……ドレリアは未だ俯いている。彼女は今日も黒のドレスを着て、ほの暗い厨房のなかに佇み、歴史家の誤った日々を追想している。衣(きぬ)には膿める紅い血の刻み。……彼女の瞳は、黒に砕ける。既に、この雨夜の夜曲は奏でられない。月は高天を渡ってゆく。ドレリア、この地平が覆われるのはいつか。

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