鬼灯が紅くなる頃には/こたきひろし
鬼灯の実が紅くなると中身を綺麗に抜き取って空にした
それを口に含んで上手に鳴らした
脳裏に仄かな明かり
思い出には靄がかかっていた
子供らはとても無邪気
数人の男のこのなかに女のこが一人混じっていた
そのこが鬼灯の実を鳴らしていた
子供らはとても無邪気
男のこたちはベーゴマを回して競っていた
子供らはとても無邪気
女のこはベーゴマを回して遊ぶ男のこらを眺めていた
子供らはとても無邪気
遊びに夢中になって日が落ちて暮れた
思い出を削除できない
過去の深層に沈めた何かを隠してあるからだ
子供らはとても無邪気
無邪気は残酷に繋がる
男のこらはベーゴマを回して遊ぶのを止めた
その内の一人が提案した
女のこの体はどうなってるんだろう
見てみたい触ってみたいと言い出した
鬼灯の実が紅くなった頃に
女のこは中身を綺麗に抜き取って空にした
それを口に含んで上手に鳴らした
その先の記憶は消してある
消ゴムで都合よく
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