発狂/山人
 
父は固まりかけた膿を溶かし
排出するために発狂している
脳の中に落とし込まれた不穏な一滴が
とぐろを巻き、痛みをともない
いたたまれなくなると腫れ物ができる
やけに透明で黙り込んだ熱量を持つ液体を
父は胃に落とし込む
体の中に次々と落とし込まれる液体のそれぞれが
燃えながらエンジンを稼働させ、父を発狂させる
そのすさまじい熱量が怨念となってさらに引火し
いくつもの数えきれない父の仔虫が
いたるところに蠢きながら断末魔の声を発している
仔虫は幾千の数となって床を這いまわり
父の怒声から次々と生まれては死亡している
      

真冬、季節は発狂していた
冬という代
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