Sestina/ふるる
あの山から降りるのは困難なことだ
見るからに太って大汗かきの男がこう述べた後
突然の暗雲
みなはディナーの手をとめて
お互いの顔を眺めた
そうすれば何もかも大丈夫だと言うように
光雄は宏子の秘密のノートを破った
そうすれば何もかも大丈夫だと言うように
二人は校舎のほぼ中央で
口を結んだまま灰緑の山々を眺めた
普段は歩けば歩くほど遠のいていくそれらが今日は
近づいてくるようにしか思えない
明日になればこの理由のない恐れも消える
一人がそう呟いたが本当は終焉が
近づいてくるようにしか思えない
口には出せないのだが破られたノートの一部が
皆の前に出現しもう何の言い
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