愚か者/メープルコート
色鮮やかな喧騒の街で僕は一人不安を抱えていた。
あらゆる期待は裏切られ、西も東もわからない。
不幸の面倒を自分一人で抱えているような錯覚。
これ以上は無理と分かっていても心のどこかに居座る期待。
期待は全て他任せだが、希望は自分で耕すものだ。
希望を持つ事を止めないのは時に愚かな頑固さだ。
夢を語れるのは心がほんの少しでも豊かな証拠。
今の僕にはそれが出来ない。
深く息を吸い込んで、人波に揉まれながら、喫茶店に入る。
全ての穢れた匂いから解放される瞬間。
一つの逃げに、また一つ不安が重なった。
逃げてはだめだ。
分かっているはずなのに。。
幸福はいつだって見えない所に宿るって事を。
戻る 編 削 Point(1)