愛のないくらし/こたきひろし
たとえ
お互いの間に精神的な愛情がわかなかったとしても
男と女が一つに重なる夜はけしてめずらしくないよ
たとえそれがゆきずりの一夜であってもさ
心なんて邪魔になって
体に押し退けられてさ
単純に獸の雄と雌になっても
そんな出会いとてんかいを
想像して舞い上がって何がいけないんだろ
人が人として生きていく道筋には
必ず身につけなくてはならないもの
そのために持たされた教科書を
何かの弾みでビリビリに破いてしまったら
社会に
人間として失格の烙印を押されてしまうなんて
愛がなくても暮らしていけるよ
愛がなくても笑っていられるさ
私は
愛情に飢える事を怖れたりしない
孤独を受け入れて楽しめばいいんだからさ
それよりも
今持っている
充たされた愛情が失われてしまう瞬間を
極度に恐れて
息苦しく思えてならないんだ
戻る 編 削 Point(2)