だいじなことはそこにあること/秋葉竹
鐘は鳴る。
この地の底にたゆたう。
鐘は鳴る。
このかたくなな街であなたと暮らしても
思い通りにならない静かに微笑む星の下、
悲しく
ゆずる。
神経の爛れたコンプレックスには
もう、謝ることもできなくて
刹那の涙さえ禁じていたけれど
遠くから届けてくれる孤独な雨の匂いは
こんな夜を秘密にする最後の魔法なのか?
だから、あなたは。
夢をみるふりをするのか?
ああ、明日になれば終わってしまう
虚ろな前夜の雨は降りつづく
いまはまだ
そんなにひどい、夢をみている。
このこころがだれにもに伝わらず
ひとり諦めかけている疚しい、夢を。
悲しく
ゆずる。
だから
この嘘に
傷つき直して
すべてを終わらせて
すべてを狂わせる。
悲しく
ゆずる。
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