白き顔/帆場蔵人
冬の立ち込める並木道は
身を縮めて、息をひそめて
葉ずれや雲を流す空の息吹きを
まとい、深い憂いに口を閉ざし
軽々に言葉を弄さない
冬よ、あなたは何を思うのか
その白き顔(かんばせ)には
沈黙こそ相応しい
歌うたいは歌うのをやめ
楽隊も行進をやめ、楽曲はやむ
誰もが静止してゆくなか
無粋なシャッターが落ち
冬の首を落とし、私はそれで
冬をすっかり見失ってしまった
そうして誰もが春へと向かってゆくしか
なくなったのだ、あの白き顔(かんばせ)
二度と出逢うことはないだろう
戻る 編 削 Point(2)