俺が歩かなくても/こたきひろし
たとえ
俺が歩けなくなったとしても
路は途切れないさ
たとえ
俺に朝が来なくなっても
街路の樹木は立っているさ
たとえ
俺が夜に溜め息をつけなくなっても
繁華街の立て看板に明かりはつくさ
たとえ
悪酔いした知らないおっさんが電信柱にゲロを吐いたって
俺の経年劣化した手足の痛みはどうにもならないさ
捻れてしまいそうな俺の心
歪んじまったかもしれない俺のたましいってやつ
生きているって
厄介なんだけど
死ぬって全く理解できないでいる
ああ
天才になりたかった
俺は馬鹿野郎だ
戻る 編 削 Point(11)