あなたの夢をはじめて見た/ただのみきや
者
初恋の相手が知らぬ間に引っ越していた少年
記憶を失くした巡礼のように
言いえない衝動にかられ彷徨い続けやがて
日も高くなったころ
見慣れた天井の下で目を覚ます
岸辺に打ち寄せられた男の中から
共に身を投げたはずの女の顔形が白く溶け
絵具で描いた夏の太陽のように輪郭すら失われて往く時の
泡立つ狂おしさが一瞬過ったかと思うともう
時は時計が磨り潰す塵芥の原料でしかなくなって
感覚は同期する何事もなかったかのように
けれどもポケットには一枚のメモがあり文字は滲んで読めないが
ただ香りだけが置いて来たものを未だ炙る熾火なのか
遠くて近い痛点が座標も得られず彷徨っている――そう
夢の中となりに座ったあなたと話すことが出来なかった
夢でもいいから会いたいと願ったあなたがすぐ横にいて
《あなたの夢をはじめて見た:2019年2月11日》
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