小詩/メープルコート
【1】
黎明の森に緑がさらさらと揺れている。
心の奥であぶくが湧いている。
しまい忘れた情熱が青く光っている。
誰かの夢と同じように。
【2】
闇の中を蠢いていた不安は、朝露となって葉から落ちた。
終わりとみるか、始まりとみるか。
流離う人々の足音は群青の中に響き渡り、
私を仲間に入れようと手招きをしている。
【3】
愛を失いそうになった時、私は祖母の万年筆を見る。
優しさを忘れそうになった時、私は祖父の面影を探す。
すべてが苦しくて堪らない時、私は妻と子供の寝顔を見る。
すべては静けさの中の美しさで満たされる。
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