浮/後期
浮
遠い友人が教えてくれた小説を目に入れている
その小説の左側には、窓があり、白いカーテンに
覆われている
青白い優しい光が、部屋の半分を
容易く理解し得る輪郭にかたどっている
右側には、薄暗いテーブルがどこまでものびている
いくつかのコップが、飲み残された液体とともに
天井に向けて、立っているだろう
昨晩の記憶が、そうだと云っているのだから
コップは、間違いなく三つだ
草が吹いてくる
風が生い茂る
海原に置かれた人間のように
わたしは時間の浮として
漂っている
されるがまま、多少の誤差を生みながら
わずかな位置を、かろうじて保持している
日
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