マーチング・マーチ/大村 浩一
黒砂、黄砂、白土、赤
砂地。私は砂粒、出かけよう、私は進路でいて退路であって、皆ここを交通し
た。見えないいいや確かに見た、私は忘れない、なのに忘れてしまう、役に立
たないところばかり覚えている、フラグメンタル、白いうなじ、靴下とあしく
び、フラグメンテーション、修正は不可能。マッチを使い切るまでは役に立っ
た(私は此処を出ます)、終の住み処、何か始まる前の、何も始まらなかった
まま、置かれたままに暮らした部屋、シャワーの前の。抹殺の前の。済んだ空
気の、雪の消えた、3月朝のデジタル・マップ。(皆ここを文通した)この後
の破綻など忘れたように巣分けの羽蟻。人が自分の死など忘れているように。
(そんなことはあり得ない)バラトン湖畔で力尽きた攻勢、母駅へ、福原京へ、
バルパライソへ、(私は手に負えない手負いの大熊、)靴には大粒の砂が入っ
ていて、出掛けよう、出かける他は無いから、もう出掛けよう。
2003/03/15 初稿
2005/03/27 Ben's cafe朗読のため部分改稿
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