6文字の冬/うめバア
午後の、柔らかい日差し
わたしが「日常」と呼んでいた
あの場所、あの匂い、あの木立の傾き
勝手な場所におかれたリモコンや
小さなお気に入りのスペースの珈琲の香り
わたしが「好き」と集めた物たち、影たち、光たち
まだ言っているの?そんなこと
まさか、帰りたいとか、戻りたいとか、そうじゃない
わたしが日常と呼んでいた
あの場所は
たしかに不安や、恐怖や、劣等感のある場所だった
それでも、確かに、わたしの場所はあった
どんなに小さく、些細なものでも
だからこそ
大切にしていた
わたしだけの、ものがたり
「帰還困難区域」
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