ノート(明滅季)/木立 悟
水を囲んで立つ光
向こう側の無い光
花をくわえたけだものたち
濡れた足跡に浮かぶむらさき
一瞬の音の通り道
色の点の沈む先
にじみほどける滴のひろがり
ひとつだけしかない水たまり
まぶしすぎるものから目をそらすとき
そこにありつづける青が
やがて水と銀になるとき
空は空を残して立ち去り
景は歌い 遠去かる
飾りをつけた大きな子の列
暗い通りに響く色
月にはね返りまた戻り
灯火を洗う霧になる音
木とガラスの夜がころがり
少し削れて地平に沈む
滝の音が止まぬ地図
線の陽射しと片すみの朝
縦と横の水壁から
合わせ鏡の罠から逃れ
駆けてゆく花たち髪飾りたち
長い長い一本道の
ただひとつの水たまりを飛び越える
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