ご静聴頂きましてありがとうございました/こたきひろし
 
人が息を引き取る瞬間と
息を吹き込まれる瞬間との
繰り返しが続いているのは間違いのない事実

夜更けの産院
もうすぐ我が子が産まれてくるのに実感がわかない
渇いている自分の喉を癒す方法がない
唇を結びながら明日の仕事の事を考えてしまう自分がいた

産院の待ち合い室の長い椅子に座っていたのは私だけだった
看護婦が近づいてき声をかけてきた
ご主人、奥さん今日中には産まれそうにはありません。何かあったらこちらからお電話差し上げますからいったん御自宅に帰って頂けますか
そう言われて私は正直張り詰めた感情の荷を降ろせたようでほっとした。

私は躊躇なく椅子から立ち上がると小さな産
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