カーネーション/ああああ
かもしれない。でもお母さんはお父さんの匂いを上書きするために家中を草花で満たした。
葬式のときも結婚式のときも、卒業でも病気のお見舞いでも花が欠かせないのはなぜだろうか。それは花が生殖器官だからです、とある人が言ったがなんの理由にもなっていないように思った。
夏休みが開けてぼくは上級生に朝顔の押し花を紙にすき込んだしおりをもらった。前の押し花のお礼だという。ぼくは押し花になんの思い入れもなかった。でも花をもらうのがこんなにうれしいことだとは思わなかった。
帰り道に考えた。お母さんの花を見せてあげなきゃいけない人がいるんじゃないか。
ぼくは冷凍庫を開ける。お父さんは言った。さよなら。
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