小夜時雨たたずむ夜に/帆場蔵人
 
小夜時雨、わたしは夜のなか
朝をしらない、昼にふれば
だれもわたしを小夜時雨と
よびはしないから、涙もない

夜の静寂を細いゆびでたたく
あの窓明かりからのぞくひと
あなたがわたしをわすれたように
わたしもあなたをわすれたけれど
わたしはいます、細いゆびのひと
小夜時雨、わたしは夜のなか
朝には雪に変わるでしょう
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