見えない幻/ただのみきや
 
ものらを
追うことの予め定められたかのような餓え
たのしげに語り合う人々から離れ
ゆっくりと飼い馴らす苦い薬のように
夕陽を飲み干したわたしの中の夜が冷める
微かな笑い声と微かな泣き声は双子のようで
ひとりの友だったろうか闇の中震えながら
肢体をくねらせているそんな気がして
言葉の代わりに全身から発芽したもの
無意識の選択が分けていった種のように人を
なんと名付けられても構わないと待ち伏せて
さらわれるために顔を鏡にしながら
ガラスを叩く氷の粒
秒針で苛まれる牢獄の隅の深い群青
心に目隠しをしてくれる蛾のように白い手は
決して来ない



                《見えない幻:2018年12月31日》







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