見えない幻/ただのみきや
夕陽を抱いた木々の裸は細く炭化して
鳥籠の心臓を想わせるゆっくりと
いくつもの白い死を積み冬は誰を眠らせたのか
追って追われる季節の加速する瞬きの中
ゆっくりと確かになって往く単純なカラクリに
今日を生きた溜息が死滅した銀河のように纏わって
風の映像だけが破壊すら破壊する静寂を響かせた
荒れた手の微かな痛みが慰めの手紙なら
想い人はコインの裏表共に在って
未来永劫出会うことすら無い
裂け目から太陽でも月でもない明かりが漏れ
幻燈が憑依する事物は新しい仮面をつけて
古い祭儀を繰り返しながら再び収縮する
生が死へとそうするように完結する度
余韻であり残り香である薄れゆくもの
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