ト なって11 フルサトへ/ひだかたけし
白い紙が浮き上がる
この静かな夜
孤独になり
孤独に孤独を塗り重ね
真っ白になる
真っ白になり
巨大な破壊音
脳髄に響き渡り
次々襲う音の洪水、
噴き出す粘性の音柱、
絶えず絶え間なく
生成し続ける
産道を通り青いビニールシートに落ちる
瞬間の光景を覚えているかい?
おまえが子宮の安らぎを捨て
体液に塗れ産まれ落ちたとき
おまえの魂にはもう既に
忘却の文字が刻印されていた
マッサラな魂だけが受け止める
新たな現の光景を前にして
(そうして父親の顔が近付く)
今、
忘却の文字
巨大な破壊音に
一瞬消え
未来から到来する
フルサト ウ
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