お父さん/梓ゆい
 

一人で車を運転して通院をしていた父。

父はビーフシチューが好きで
茹でたての蕎麦とうどんが好きで
あんこが詰まった草餅が好きで

でもそれは家族みんなと食べたいから
頑張って作り方を覚えた料理だったのかもしれない。

「お父さんと一緒なら、何を食べてもおいしかった。」

今でもずっと
記憶を掘り返しては詩を書いている。
別れを告げたときの顔は
羽織袴と相成って恰好良かったよ。
早く死ぬなんて酷いじゃないか。
もうすぐ孫が生まれてくるのに。

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