西の空に向かって/こたきひろし
 
背中にぜんまいがついている。それがすべてのヒトの動力源だから、必然とそれを回す力が必要になる。
果たしていつからそんな仕組みに変化したかは解らなくなっていて、それを追及する行為には死の罰則が待っていた。と言ってもそれはぜんまいを背中から外されてしまうという穏やかな方法が用いられている。
ハンマーで打ち砕かれるとか、重機で踏み潰されとかではけしてない。

いちにち一回巻かれてそれぞれが眠るまでの間のエネルギーは確保される。眠って目が覚めるまでの間にぜんまいは巻かれに巻かれるのだ。どうやって巻かれ出すかは極秘になっている。それは想像する事すら許されていないのが私達の偽らざる現実になっている。
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