忘却/こたきひろし
 
いったい自分が誰なのか
何者なのかさえ
解らなくなるまで忘れた去った覚えはない

母親に罵声を浴びせた記憶はこびりついて剥がれてくれないけれど
あれば反抗期には誰でも沸き上がるに違いない
近親憎悪のせいだ
だけど
母親の首を思いの限り絞めて窒息させた訳じゃない


自我の覚醒
成長への階段
なんて
嘘嘘嘘

ただただ
思春期、反抗期だったから

理由のわからない
説明のつかない怒りにまかせて
母親に悪態をついたけれど
厳格な父親には
羊のようにおとなしかった

母親は女だ
頼みもしないのに俺を勝手に産んだ
なんて
理不尽な理由をつけて

なんて卑怯な俺だったんだよ

忘却
忘却
忘却

自分が誰なのか
何者なのかさえ
忘れ去ってしまえたら




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