冬はコートを纒い、何かを隠している/帆場蔵人
手放したコートが風に舞い
風がコートを羽織っているようだ
見知らぬ少年がそれに目を
奪われている足元には
踏みつけられた草花が痛々しい
何も人に与えられないから
たまになんでも手放してしまう
寒空に落ちていくコートは
自由に鳥とともに飛び
落ちるときには花を優しく
包んでくれるだろう
一心不乱に、祈るように
男は路上に座り込み、雑踏に背を向けている
大量の紙に線を!点を! 支離滅裂に?
文字なのか?記号なのか?地図なのか?
愛の失禁か、いや楽譜かもしれない
それは
秘されている
(彼なりの意味が重なり、積み上げられた紙
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