あなたの居なくなった世界に/ホロウ・シカエルボク
枯れたバラ園のそばで
鮮やかな過去に埋もれて
もう聴こえないヴァイオリン・ソナタの
朧げな旋律を追いかける
厳しく美しい冬
風は心の奥まで
凍らせようと目論んでいる
死んだ土をすくいあげて
甘い匂いを探すものの…
太陽は幻想のように高く
光は針のように降り注ぐ
いつかもあった冬の日
でもかつてないほどの
傾いた門扉は語り部のように
いつとなくゆらゆらと揺れている
(もうここにはなにもない、誰も居ない)
そんなことを語りかけているように見える
かつてあったものだけを守り続けようとそうしているように見える
大きく
優しい犬が二頭居た
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