スラップスティック・メルヘン/ホロウ・シカエルボク
 
何故だかひどく落ち着いた気分でその状況を受け止めた
ハイになっているのか痛みは感じなかった
それに致命傷でないことはすぐにわかった
女の顔には気の毒になるほどの迷いだけが見えた
周囲は大騒ぎしていた
俺はナイフから女の手を引きはがし傷口から引き抜いた
そして休憩スペースの隅にナイフを投げ捨てた
女は諦めたようになにもしなかった
「わかるかい?」と俺は聞いた
女は予想もしないことを言われたとでもいうように目を少し大きく開けた
「傷を負って血を流している人間がここに二人いる、でも誰も助けになんか来ない」
「世の中なんてそんなものなんだ、遠巻きになにかいいことを言えばそいつは正しい
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