スラップスティック・メルヘン/ホロウ・シカエルボク
サウジアラビアの油田火災のニュースが流れる電化店のフロアーを
ローリング・ストーンズのシャツを着た若い女がナイフを持って歩いている
彼女の敵意は自分にだけ向いているようで
右腕は指先から肘のあたりまで傷口が見えないほどの血に濡れていた
警備員は側にいるもののどうしていいかわからず
年老いた女の店員は青ざめた顔で床にモップをかけていた
誰かが警官を呼んでいるのだろうがそいつらはまだ到着していなかった
俺はレストスペースでスマホを眺めていて
その騒ぎに気付くのが遅れた
俺の無関心は女の気に入らなかったらしい
突然走り出して振り返りざまの俺の左肩口にナイフを突き立てた
俺は何故
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