スラム街の坂道/羽根
 
石にはボブとミックを塗り込める

手を離すとコロコロと石はゆっくり下がり始める
回転する石は時々は飛び石のように少し跳ねる
坂の十字路は殆ど平たく静かに転がって止まりそうな時
急に石は灯台のように閃光を放ち始めた
転がる石はまた坂を下り始め

段々と回転と速度を増し
しだいに遠くに離れて小さくなると
逆に遠くになればなるほど
割れた教会のステンドグラスや
回らない万華鏡
汚れて剥がれたクリムトの金色のような色彩を放ち
鋭さを増し眩しいほどに明るくなる

遂に石の存在を消すほどの輝きになると
大きく跳ねて水平線の上に浮かぶ夕陽に飛び込み
まるでローマ帝国が繁栄を謳歌したような
都会のイルミネーションよりもさらに美しく
均衡した石畳のスラム街の坂道を映し出し
いづれは沈む夕陽にさらなる輝きを与えていた
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