若い芸術家の二人/ああああ
 
したら、母がAを助けただろう。Bの借金の催促をする電話が何度も何度もうちにかかってくるなんてことはなかったので、Aが借金を建て替える必要はなかった。
 Bはもう三歳になるがあまり言葉をしゃべらない。Aはもうすぐ三十歳になる。BはいつもAをつねったり噛んだりするが、Aの中に泣いている子供はもういない。
 AはBを殴らなかった。雨が上がると散歩に出かけ、近視のせいでにじんだ街灯を楽しんだ。二人には未来がある。Aは望みどおりの職にありつき、Bが不治の病と診断されたときも、動じることはなかった。AはBを殺さなかった。Aは自ら命を絶たなかった。AとBはいつまでも幸せに暮らすだろう。
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