お見送り/梓ゆい
 
冷たくなった父の手の上に
菊の花をそっとのせて
石で棺に釘を打ち付けた
冬の昼下がり。

微かに差した日差しの中で
手を振る父の姿が見えた。

それは
我が子を育む願いのように
手を合わせ
旅立つ父を見送る娘たちを
いつまでも照らしていた。

私は黙って
遺影を抱きしめる。
私は声を押し殺して
「お父さん。」と
呼んでみる。
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