冬に向かう 三篇/
山人
り
その洞窟に船を浮かべるのは私
血が滞り血流は途絶え
白蝋色の手足とともに
私は武骨に櫂を操る
たとえば雪の粒が
小さな羽虫の妖精だったのなら
そのはらはらとした動きに
笑みさえ浮かべることができるのに
今はこうして
ばらまかれる針の破片のような雪が
私の頭上に降り積むだけだ
声帯すら凍り
ふさがれた唇は発話すらできない
浮遊する、意味のない隠喩が
私の脳片から出ることも許されずにいる
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