冬に向かう 三篇/山人
 

その洞窟に船を浮かべるのは私
血が滞り血流は途絶え
白蝋色の手足とともに
私は武骨に櫂を操る

たとえば雪の粒が
小さな羽虫の妖精だったのなら
そのはらはらとした動きに
笑みさえ浮かべることができるのに
今はこうして
ばらまかれる針の破片のような雪が
私の頭上に降り積むだけだ

声帯すら凍り
ふさがれた唇は発話すらできない
浮遊する、意味のない隠喩が
私の脳片から出ることも許されずにいる
戻る   Point(2)