ただなか/はるな
 

冬がきて、わたしはむすめに、ハムの切り方や三つあみの仕方を教えるのだ。花や色の名前、鍵盤のおさえ方も。こまかいビーズや紐のきれはしで満ちていく部屋。冬はきて、みんな老いる。ほんとうに世界は存在しないのだろうか?どこにも。
ユーカリ、樒のにおい、折れたカーネーション、12月色の花たち、頑丈なアイビー・・・ビスケットを割る。わたしの手はまだ緑色に染まっていない、重たい鍋を出して、週になんども肉を煮る。ポインセチア、シクラメン、気のはやいスイトピーも、みんな、なにもしゃべらない。饒舌な湯気、わたしたちの現実が捉えようとするわずかな先で燃え始める。熱くて触れない、と思うときにはすでにただなかで、掴んだと思えば燃殻。

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