およそ一千年前の一夜に/こたきひろし
 
およそ一千年前の一夜に
彼は女の人からそのからだけを買いました

およそ一千年前の一夜に彼は
首都の街で
女の人から からだだけを売って貰った
自分が働いて 手に入れた金で

肉体の欲望に汚いも綺麗もないと思います
性を売買の対象にする
事の是非は
何ら彼の心に躊躇の影を落としませんでした

その頃 彼には
たしかに一途に思う異性が存在していました
それは高くたかく
彼のたましいを高揚させる恋愛感情でした
しかし
けれど
それはただただ切なく胸をかきむしられるだけの片恋でした

およそ一千年前の一夜に
彼は未成年でした
およそ一千年前の一夜まで
彼は
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