処刑/ミナト 螢
 
トーストにバターを塗るナイフが
会話のように渡されることなく

淡々とした世界に割り込む
七時のニュースが今日も聞こえる

誰かが踏み外した人生の
後始末を映すナイフの先で

鈍く光ってる涙の行方に
フラッシュを当ててバターが溶ける

トーストの上はリングみたいに
囲まれても戦う場所だけれど

その白い生地に顔を埋める
ナイフを持つ手が息を殺して
食パンの耳からちぎって食べる

不正や隠蔽を見逃さずにいる
この社会にも正義があるのなら

どんなにライトを浴びた身体でも
壊れたリングに人は立てない
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