浮上未遂/霜天
さわれそうなほどの青、空
心音の近くで
水の流れる音がしている
少し、痛い
大気圏の底辺で沸騰している僕ら
水を注いでみると、遮断機が下りて
通過していく何かがある
夕暮れにはすり抜けた風船を
つかもうとする手が浮上しかけて
慌てて止められる
行ってはいけませんよ、と
親の声を真似て
空が青いので、どうしても
少しだけ痛いのです
あの門を潜り抜けたあたりの約束を
今も引きずっている景色を
いつまでも支えになっているようで
地図の上
書き込まれた記号の意味が
少しずつぼやけてきても
まだ僕らは浮上する手のひらを
諦めないでいるようで
今も
心音の近くで水の流れる音がしている
届くような、届くような
さらさらと
まだ間に合うよと、その速度で
待ち焦がれているような
さらさら、さらさら
と
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