御免よ、僕には気づいてあげることが出来なかった/ホロウ・シカエルボク
 
どひどい状態だったのだろう、いろいろな人が僕を心配してくれた、話を聞こうとしてくれる人もたくさん居た、その中には僕がなんとなく好きだと思っていた人も居たし、なんとなく嫌いだと思って居た、人ってわからないものだな、と僕は思いながら、そのすべての申し出を丁寧に感謝を込めて断った、ありがとう、でも僕自身まだこれをどんなふうに話せばいいかわからないんだ―そんなふうに陰鬱な二ヶ月ばかりが過ぎたある日、僕のスクーターが突然動かなくなった、セルのボタンの通電音が小さく聞こえるだけで、エンジンはまるでかかることはなかった、もう十年ぐらい乗ったからなぁ、とため息をつきながら、隣に置いてある自転車を引っ張り出そうとした、しばらく乗って居ないからタイヤの空気をどこかで入れないといけないだろうな、そんなことを考えながら…そのとき、乾いた音を立ててなにかが前輪のスポークの隙間から転がり落ちた、なんだろう、と拾い上げてみるとそれは綺麗に白くなった小さな生きものの頭蓋骨だった。



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