耳鳴りの羽音/帆場蔵人
 
こツン、と
硝子戸がたたかれ
暗い部屋で生き返る
耳鳴りがしていた
からの一輪挿しは
からのままだ

幼い頃、祖父が置いていた養蜂箱に
耳をあてたことがある、蜂たちの
羽音は忘れたけれど、何かを探していた
耳鳴りは蜂たちの羽音と重なり
ひややかな硝子戸に耳をあてて

蜂になるんだ

やみに耳をあて、描く、やみの先、花は
開き、一夜にして花弁は風にすくわれ
蜂は旋回しながら
行き先は知れない
妖しき宵の明星に惑い
ジグザグ、ジグザグ、
風はすくわない

どこ?

いつかの夜に咲いた
花の手触りは、あたたかで
一層、孤独をあぶり出し
甘い蜜はより
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