誰かが誰かを呼んでいる/こたきひろし
 
誰かが誰かを呼んでいる
しきりに名前を呼んでいる
しかし
その声は辺りの喧騒にかき消されて
落日の空の彼方に吸い込まれてしまう

なにも知らない子供らは
何者かに
何処かわからない遠くへさらわれて
何かを知ってしまった大人たちは
絶えず得たいの知れない不安に脅えなくてはならないのか

忍び寄ってくる黄昏
すり寄ってくる夕暮れ
そして
沈んでいく夜の闇へ

俄に激しく降りだした雨は
勢いと激しさを増し続けて
世界はたちまち洪水に飲み込まれ
なすすべをなくし
それでもヒトは生きるすべにすがり
瞬きの間に
魚へと
魚類へと
後退をして進化した

筈がない
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