昔は良かった/卯月とわ子
 
古ぼけたオルゴール
今じゃどんな音楽を奏でていたのか
誰も知らない

時代に取り残されて
ホコリまみれになった君は
わたしによく似ている
今のわたしに

必死にしがみついていた
でも
その苦労虚しく
わたしは置いていかれた
あっけなく
何事もなかったかのように

時代という名の大きな列車には
大勢の人が乗っていたんだ
わたし一人落ちたって
誰も気付くはずはない

昔は良かった
誰かの口癖
煙たく嫌っていた言葉が
わたしの背に張り付いた
今口を開けば
わたしも誰かと同じになるだろう
昔は良かった
懐かしむ記憶なんて何一つないけれど
今よりも
昔は良かった
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