ロストの先端/ホロウ・シカエルボク
 
の繁華街を歩いてみる。そうしてわたしを見る人たちを観察する。あの視線―そうして、わたしも以前はあっち側に居たのだと思う。あんな目をして誰かのことを見ていたのだと。人間は所詮目に見えるものだけを価値と思ういきものだ。そんなものたちの社会に属することがどれだけ誇らしいことだろう?もうわたしにはそんなことはなんの意味もなくなった。これからわたしにどんなことが起こるのかは誰にもわからない。もしかしたらいつかあのコンビニを出て普通に暮らすこともあるかもしれない。でもわたしは忘れないだろう。この暮らしの中で自分が見てきたもののことを。誰にも知られない海は笑いかけてこない、そんなことを。わたしは家に帰る。鍵を開け、中に入り、鍵を閉める。どこにも属していないわたしが住むところ。歯を磨いて、顔を洗い、寝床に入る。月は健忘症の人間の意識のように薄れている。わたしは夢を見なくなった。だって夢のなかで生きているようなものだもの。



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