夕暮れの空から/こたきひろし
食材と生活用品。
まとめては買わないから日々近所のスーパーマーケットに行く
私は詩人の真似事している。それはどこまでも真似事であって本物にはなり得ない。
私の妻は詩に興味もかんしんの欠片も見せた事はない。
それは妻ばかりではない。同居している二人の娘も同じだ。勿論同居している一匹の雌の猫も。
私をのぞいて三人と一匹は生きていくために詩を必要としていないのだ。
所詮、詩は生きるに役にたたないものだと知っているからだろうか。
日々の買い物は妻と二人で行く。
私の頭のなかは厄介だ。買い物しながらも詩が何処からか蟻みたいにわいてくる時がある。
そうなると蟻の行列に私自身が並ばなくてはならなくなる。
蟻が私の脳の味噌を食べている。
妻は棚から味噌を手にすると買い物かごに入れた
いつも買い物かごは私が持って歩く。
持ちながら妻の後を付いて歩く。
詩の蟻がわいてくると私の体は人の脱け殻になってしまう。
私の妻は自分の後をついてくる夫がまさか脱け殻になっている事に
無論気づく筈はないだろう。
と思うけれど
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