波の子/帆場蔵人
 
常夏の陽が波にとけ
波の子生まれ遥々と
この島国へ流れ流れて
夏を運んで、春を流して

波の子ゆすら
ゆすら、すら
鰯の群れや鯨の髭を
気ままにゆらし
ゆすらすら

浜辺に埋めた悲しみを
夏の波の子、あやします
寄せては返し、ゆすらすら
口を閉ざした貝たちも
唄いはじめる、ゆすらすら

浜辺に埋めた悲しみも
遠い海へと運ばれて
いつしか波に還ります
戻る   Point(7)