私の誕生日/梓ゆい
 
父の夢を見た。
背広を着た元気な頃の姿を。

頭を撫でられて
何か言いたげに口元が動いても
声を聴くことは叶わない。

目覚めたら
今日は私の誕生日であることに
気が付いた。
日々の暮らしに追い立てられて
過ぎる事だけを願う初夏の朝。

「それではダメだよ。」と
厳しくも優しい父の声が聞こえてくる
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