しあわせな造物主/腰国改修
 
遠くを見るような目で話した。

十代の終わりにはその父親とは離れて暮らし、その後は会うこともなかったという。博士の生まれた家庭は、一家の大黒柱こそそんな風だったが、その祖父より前の代で巨万の富を築いた家系だった。そういう環境を捨ててまでなぜと思ったが、その後に博士が涙を流しながら語ってくれた辛い過去を知って心底理解できた。なぜ、横揺れの地震なのか、なぜ昆虫型ロボットが三種類の目的遂行プログラムしか用意されていないかということも…

博士の肩を抱いてしばらく我々は静かにしていた。

地震予知の結果得られた当該日、地震発生予定は午後十一時二十九分、それに合わせてどこから見ても本物の昆虫とし
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