水(断片)/kajitsu
たゆたう水の上では
うまく像を結べずに、
ゆらゆらとぼやけてしまう、
そういった運河に浮かぶ街の景色はあなたの目のようだった。
手のひらいっぱいに掬った水が、
両手の中で震えていた。わたしの心と似ていた。
***
外では
雨のざわめきが絶え間なくてやるせない。
電車はすし詰めなのに、
野ざらしのせいで
公園のベンチは誰も近寄りはしなかった。
中と様子がかけ離れていると雨は異国めいたものに感じられ、
あなたが遠くて、
この家は静かなのだ。
***
本を身体に染み込むように読めた、少なくとも今日は。乾くなら、落ち葉
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